えっ!?贈与税が変わる?

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Vol.2742021年5月11日発行

えっ!?贈与税が変わる?

こんにちは。
備順子税理士事務所の備です。

さて、毎月第2・第4火曜日にお届けしておりますこの「マネーレシピ」。
第2火曜日は、税理士&FPの備順子から、
第4火曜日は、FPの前野彩からお送りいたします。


令和3年度税制改正大綱の中に、
資産家にとって気になる一節がありました。
「相続・贈与の一体課税」という不穏な言葉もありました。

いったいこれは何のことでしょうか?
今回はこの気になる話題について備よりお伝えしましょう。


┏━━━┓  1.現在の相続・贈与の何が問題でしょうか
メニュー┗┓  2.今後の贈与税の課税はどうなるでしょうか???
     ┗┓ 3.セミナー告知

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■□ 税理士備順子のマネーのミニレシピ
□   ~現在の相続・贈与の何が問題でしょうか~
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1.現在の相続・贈与の何が問題?

贈与税について問題視されている点がふたつあります。

ひとつは資産家の相続税の節税対策として利用されているという点です。
相続税は累進税率で10%~55%の相続税がかかることとなっており、
資産家ほど税負担は重くなります。

そこで重い相続税を避けるために生前に子や孫に贈与することで、
相続財産を少なくするという相続税対策が一般的に行われています

贈与時の税負担についても小分けにして長期にわたり贈与することで、
思いのままに引き下げることも可能です。

行き過ぎた節税には歯止めをかけるというのが、
ここ最近の税制改正の流れです。


もう、ひとつは高齢層の財産が
若年層に移転せず貯蓄されたままである点です。

若年世代に早期に移転されれば、
消費や有効活用に向かい経済の活性化につながります。
ところが、高齢世代に資産が偏っているうえに、高齢社会が進み、
いまや100歳の親から80歳の子へという老々相続が稀ではありません。
その結果、若年世代への財産移転が進まなくなっています。

日本の経済活性化のためには、
若年世代への資産移転は望まれています。


この2つの問題点は、
かたや、贈与を押さえたい、
かたや、贈与を促したい、
ということから矛盾しているように見えます。

果たしてそうでしょうか。

裕福な家庭に生まれると十分な教育が受けられます。
大卒の方が生涯賃金も大きいという統計もあります。

つまり、裕福な家庭においては、わざわざ贈与をしなくても、
もともと子・孫世代は、活発に消費する資力が十分あるのです。
ですから、贈与を受けることで、
さらなる消費に結びつくわけではないのです。

つまり、贈与により、ストックされる場所が
父母・祖父母ではなく子・孫に移転しただけなのです。

そこで、資産の移転のタイミング
・・・相続による移転か、贈与による移転か、
相続直前の贈与か、数十年前の贈与かなど・・・
で税負担に不公平がおこらないように
相続税・贈与税の一体課税の検討がなされることとなったのです。




2.現在の生前贈与の課税のしくみ
(ご存知の方はここは飛ばして3.へお進みください)

現在、贈与税には暦年課税(原則)と、
相続時精算課税(届出による選択)の2つがあります。

暦年課税とは・・・
1年間に受けた贈与財産を合算し、
そこから年110万円の基礎控除額を差し引いて
10%~55%までの累進税率を乗じて贈与税額を算出し納税する方法です。

贈与をすることで、贈与者の相続財産から切り離せるのですが、
贈与者の死亡前3年間の贈与については、
相続財産に取り込んで計算し直します。
贈与税を支払っていた場合は算出された相続財産から差し引き、
2重課税にならないような仕組みです。

相続時精算課税とは・・・
60歳以上の父母・祖父母から、
20歳以上の子・孫への贈与をする際に
この方法を選択して利用します。

贈与時は累計で2,500万円までは無税で財産を移転し
2,500万円を超えると超えた部分の贈与財産について
20%の贈与税を仮払いしておきます。

贈与者の死亡時に生前贈与を相続財産にすべて合算して、
相続税を算出し仮払いの贈与税を差し引きして精算します。
相続時精算課税は、生前贈与財産と相続財産を、
一体として課税する制度です。



3.現在の相続税対策としての生前贈与は?

現在、相続税対策としての生前贈与は暦年贈与です。
相続税率よりも低い贈与税率の範囲内で、
長期間にわたって、
小分けにして贈与する方法です。

贈与者の死亡前3年内の贈与でなければ、
相続財産に取り込まれません。

このため、例えば、
何もしない状態では相続税の負担割合が30%の人が、
贈与税の負担が10%程度になるように調整しつつ
子や孫に財産を少しずつ長期間かけて
贈与を繰り返します。
結果として、贈与した財産部分については
20%の節税ができたこととなります。

一方、相続時精算課税は、
贈与財産がすべて相続財産に合算されますので、
相続財産を減らすことにはつながりません。
税金対策としてはほとんど活用されていないといえます。

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■□ 税理士備順子のマネーのミニレシピ
□   ~今後の贈与税の課税はどうなるでしょうか???~
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1.今後の贈与税の課税は・・・

「資産移転の時期の選択に中立的な税制を目指す」
ということから、
いつ、
何回、
いくらの、
贈与を行っても最終的に相続財産に取り込まれて、
精算する相続時精算課税制度に一本化というのが、
最もこの趣旨に沿った贈与方法であると言えます。

この贈与方法に一本化されることも可能性としては、
ゼロではないかもしれません。
しかし、
相続時精算課税は節税に結びつかないということで、
高齢層から若年層への財産の移転が進まなくなることが考えられます。

資産が若年層による消費や有効活用に向かわなくなれば、
日本経済の活性化の側面で問題です。


そこで、諸外国の制度を参考に検討されているようです。
我が国の暦年課税においては、
相続前3年間の贈与を相続財産に取り込みますが、
フランスでは15年間、
ドイツでは10年間、
イギリスでは7年間の贈与財産を相続財産に合算しています。

これを参考にするということは、
相続財産に取り込む生前贈与が、
もしかしたら10年程度になるのかも???



2.これからの相続税対策はどうなるでしょう

どのように改正されるかはまだ明確になっていませんが、
改正後の内容が、改正前の贈与に影響することは無いでしょう。

ですから、現在使われている節税対策としての方法、
つまり、毎年、子や孫に小分けにして、
繰り返し贈与するという方法は、
改正されるまでは効果があると言えます。

その金額を増やしたり時期を早めたりすることは、
検討したいところです。


また、相続時精算課税であれ、
暦年課税であれ、
相続財産に取り込まれる価額は、
「贈与時の価額」であるということです。
この点についての改正の可能性は極めて少ないです。

例えば、贈与時の価額が1,000万円であれば、
それが相続時にたとえ1億円に値上がりしていたとしても、
1,000万円で相続財産に取り込まれます。

ですから、
将来、値上がりが期待できる資産の贈与は効果的でしよう。

具体的には、都市開発事業や区画整理、
新駅の設置予定がある土地、
評価額を引き下げた後の自社株式、
値上がりが期待できる上場株式などの贈与が考えられます。

また、収益を生む財産の生前贈与も有効でしょう。
例えば投資利回りのいい収益不動産の贈与をしますと、
毎年の収益はもらった人の財産になり、
贈与者の財産を増やしません。
つまり、収益部分を相続財産から切り離したこととなります。

さらに、贈与する側の所得税は重く、
贈与を受ける側の所得税が低い場合は、
収益物件の移転により、
一家のトータルの毎年の税負担の軽減にもつながります。



3.贈与の留意点

贈与の留意点は、
せっかくの贈与が、税務調査などで否認されて、
「贈与は成立していない」とされてしまうことです。
その結果、
相続財産に組み込まれることになりかねません。

その対策としては、
贈与契約書を作成することと、
贈与の事実を明確にすることです。
例えば、口座から口座への移転、
不動産や株式の名義書換等などは
きっちりしておくべきでしょう。


その一方で、
節税目的で実行したのに、
将来、相続が起こった時に生前贈与があったことで、
かえって、遺産分けで揉めに揉めて、
収拾がつかなくなるということは、
少なくないようです。

資産家は資産家で、財産が多いがために、
家族が壊れてしまうこともあるようで、
つらい話ですね。




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