こんにちは。
備順子税理士事務所の備です。
さて、毎月第2・第4火曜日にお届けしておりますこの「マネーレシピ」。
第2火曜日は、税理士&FPの備順子から、
第4火曜日は、FPの前野彩からお送りいたします。
国税庁は4月6日に新型コロナFAQを更新しました。
新型コロナウイルス感染症の影響で
確定申告や申請手続き等について期限に遅れる場合は,
その期限延長についてはとても簡単でした。
申告書の余白に
「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」
などの文言を記載すれば,
申告期限も納付期限も簡単に受けられていたのです。
ところがです。
所得税等の申告期限後(今年は4月15日)も,
新型コロナの影響で申告等ができない場合には,
「災害による申告,納付等の期限延長申請書」
を別途、提出しなければならなくなります。
今年も簡単に延長できると思って
まだ、のんきにしておられる私のお客様が数名。
国税庁の発表をお伝えすると・・・
それらのお客様から
速攻で不足資料をお送りいただけましたー。
やはり、期限ってとても大切です。
今回のテーマは配当の申告方法についての税制改正について、
備よりお伝えします。
┏━━━┓ 1.令和3年度のうれしい税制改正
メニュー┗┓ 2.所得税と住民税で異なる方法を選択するとは???
┗┓ 3.源泉徴収あり特定口座の申告の有利不利
4.セミナー告知
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
....................................................................................
■□ 税理士備順子のマネーのミニレシピ
□ ~令和3年度のうれしい税制改正~
....................................................................................
今年の税制改正の中でたった4~5行の地味な内容ですが、
とてもうれしい改正がありました。
上場株式等の配当等や
源泉徴収ありの特定口座内の株式等の譲渡所得については、
申告するかどうかとか、
どのように申告するかとかは自由に選択できます。
しかも、所得税と住民税で申告方法を変えることも可能です。
とはいえ、所得税と住民税で申告方法を変える場合は、
所得税の確定申告後、
住民の申告も別途提出しなければならなかったのです。
これが、やはり結構じゃまくさく、
あまり活用されていたとは言えませんでした。
これが令和3年度税制改正で
上場株式等に関する所得の全部について、
個人住民税において異なる申告方法(申告不要)を選ぶ場合は、
所得税の確定申告書の提出のみで
申告手続が完結できるようになります。
確定申告書の新フォームはまだ公表されていませんが、
おそらく、第2表に付記事項として記入することになると考えられます。
....................................................................................
■□ 税理士備順子のマネーのミニレシピ
□ ~そもそも所得税と住民税で異なる方法を選択とは???~
....................................................................................
1.上場株式等の配当所得の課税方法
上場株式等の配当所得の課税方法には、
次の3つの選択肢があります。
所得税と住民税で異なる方法を選択できます。
イ 上場株式の配当所得の課税方法「何もしない」
上場株式等の配当は受け取る際にもともと
所得税15%と住民税5%が源泉徴収されています。
なん百万円の配当があっても、
このまま知らんふりすることができます。
(ここでは復興特別所得税は省略いたします)
ロ 上場株式の配当所得の課税方法「総合課税で配当控除を受ける」
総合課税による申告は、
配当所得を給与や事業などの他の所得と合算した後、
基礎控除や扶養控除等を差し引いて、
その残額に5%~45%の累進税率を乗じて税額を計算します。
そこから、配当所得の10%を差し引いて納付する金額を算出します。
一般的に所得税率23%以下の人は上場株式等の配当所得について、
総合課税を選択して所得税の確定申告をする方が有利です。
所得税率23%とは課税所得が900万円以下の人です。
納税者の約8割の人が所得税率10%(課税所得330万円以下)ですので、
多くの方がこの方法で申告すれば、
所得税の還付があり有利であるということとなります。
税額は所得×税率で求められます。
例えば所得税率10%の人に100万円の配当所得があったとします。
(所得税15万円と住民税5万円が控除され80万円を受取っています)
配当所得の部分にだけ注目して有利不利を考えてみましょう。
配当所得100万円×10%(所得税率)=10万円(所得税額)
「配当控除」は、ここから配当所得×10%を差し引きます。
従いまして、この場合は
10万円(所得税額)-100万円×10%(配当控除の控除率)=0円
つまり、配当所得部分に係る税金はゼロとなります。
そこで配当所得に対して源泉徴収された所得税15万円が
全額還付の対象となります。
一方、住民税について総合課税を選択した場合、
所得に対する税率は一律10%で、配当控除の控除率は2.8%です。
100万円×10%=10万円(住民税額)
10万円-100万円×2.8%(配当控除率)=7.2万円となり、
もともと源泉徴収されていた5万円だけでは足らないため、
追加で納税が必要となります。
所得税の確定申告だけしていると、
その情報をもとに住民税が計算されるため、
住民税の追加払いをしなければなりません。
そこで、所得税は確定申告で還付を受け、
住民税を申告不要とするにはどうしたらよいでしようか。
現在は、所得税の確定申告とは別に、
市町村に「配当所得について申告不要を選択」している旨の
申告書を提出すれば、
住民税の追加納税が回避できることとされています。
今回の改正で、令和3年分以後の配当所得について、
令和4年以後に申告するときに
所得税の確定申告書に付記することで、
住民税の申告が不要となるのです。
ところで、申告の有利不利は
住民税だけの話しではありません。
住民税における所得金額等や住民税額をもとに、
国民健康保険料や介護保険料、
後期高齢者医療保険料、
高齢者の窓口負担割合、
3歳未満の保育料などの負担額の軽減や、
児童手当、
高校就学支援金、
すまい給付金など
受けとれるかどうか?
受け取れるとすればいくらか?
に影響します。
配当所得について住民税で申告することを選択すれば、
これらの保険料の計算上の所得金額に含まれます。
なお、投資信託の収益の分配については、
株式以外の割合や外貨建て資産の割合で、
配当控除の控除率が所得税0%~5%、
住民税0%~1.4%と投資信託の商品ごとに異なります。
投資信託の商品により、有利不利の損益分岐点は異なりますが
課税所得330万円以下の年(所得税率10%以下)であれば、
どのような投資信託でも所得税においては有利です。
なぜならば配当控除が全くないものとした場合でも
投資信託の収益については
所得税として15%源泉徴収されているため、
所得税10%で済めば、5%部分の税金は還付されます。
その際はやはり、
住民税は「配当所得は申告しない」ことを選択すれば、
住民税の追加納税が回避できますし、
先ほどの住民税の所得や税額を基準とした
社会保険や様々な給付で不利になることはありません。
ハ 上場株式の配当所得の課税方法「分離課税で損益通算」
上場株式の配当所得の申告方法の3つ目は、
上場株式の譲渡損と通算する方法です。
配当のプラスの所得から譲渡損失を差し引きますので、
源泉徴収されている所得税や住民税のうち
配当所得の減少分に係る部分が還付されることとなります。
こちらの有利不利については
次の源泉徴収あり特定口座の上場株式等の譲渡益で
まとめてお伝えしましょう。
....................................................................................
■□ 税理士備順子のマネーのミニレシピ
□ ~源泉徴収あり特定口座の上場株式等の申告の有利不利~
....................................................................................
源泉徴収あり特定口座の上場株式等の譲渡益は、
所得税15%・住民税5%で源泉徴収されており
これも申告不要です。
上場株式等の譲渡損が生じても
同一口座内の譲渡益や配当所得等は、
口座内で自動的に通算され税額は精算されます。
ただし、その同一口座内で通算してもなお残る損失については、
他の口座の譲渡益や配当所得等から差し引くためには、
申告分離課税による確定申告が必要です。
さらに、それでも残った損失については繰り越して、
翌年以後3年間の上場株式等の譲渡益や
上場株式の配当所得から差し引くこともできます。
先ほどの配当所得とは異なり、
所得税も住民税も税負担が減少します。
しかし、ここでも気をつけなければならないのは、
国民健康保険料等は
上場株式にかかわる所得については他の口座との通算後や
譲渡損失の繰越控除後の住民税の所得金額等をもとに決定するという点です。
他の口座との通算後や繰越控除後に所得が残れば、
所得金額等に含まれます。
申告不要のままであればこれに関する所得はゼロ扱いです。
住民税の還付金額以上にこれらの保険料が増加することも、
「あるある」なのです。
さらに、扶養控除等の対象となる親族の所得は、
合計所得金額が48万円以下となっています。
この合計所得金額とは、
譲渡損失の繰越控除前の所得金額です。
例えば、
扶養親族である子(例えば株式投資が大好きな大学生)が
配当所得を申告することで、
親の扶養控除の対象からはずれてしまう可能性はあります。
したがって他の口座との通算や繰越控除の申告については、
申告により減少するその本人の税額に対して、
その一方で、
増加する国民健康保険料等や
その人を扶養控除等の対象としている人の税額への影響とを
総合的に検討して、
「所得税は申告、住民税は申告不要」、
「所得税・住民税ともに申告不要」などを
判断する必要があるのです。
この上場株式等に関する課税制度の選択の有利不利の判断は
所得税のしくみや、
住民税の所得や税額を基礎にする給付金等の制度、
世帯員の所得の増減と、家族の税額への影響などなど、
幅広い知識が必要とされますね。
所得税の申告で還付を受けて大喜びした後で、
5月ごろの住民税や国民健康保険料の負担増の通知に驚いて、
市町村に問い合わせが殺到するのでしょう。
多くの市区町村はホームページで、
「上場株式に関する申告は慎重に!!!」
と注意を促しています。
.................................................................................
■□ セミナーのお知らせ□■
..............................................................................
★☆★NEW★☆★
Waku♪Waku♪お金力アップセミナー第146回
今さら聞けない!?でも知りたい! 投資信託基本のキ
-----------------------------------------------------------
投資をしたらお金が増えるのかな~とは思うけれど、ソンするのは嫌。
なんとな~く投資に興味はあるけれど、面倒くさいのは嫌。
そんな方にこそ、
本当に嫌かどうかを判断するために聞いて欲しいのがこのセミナーです。
イメージではなく、正しく知った後で
投資をしないも良し、するも良し、だと思います。
■日時■2021年5月12日(水)19:00~20:00
■場所■
リアル&オンラインの同時開催です。
オンラインの方には、参加アドレスはお申し込み時にお伝えします。
■連絡先■090-6609-0750
■参加費■
・一般の方1000円
・FP資格をお持ちの方2,500円
★今年から10回分の一括払いで12回(1年間)利用できる年会員がスタートしました!
■テキスト■
「本気で家計を変えたいあなたへ」<第4版>
(日本経済新聞出版社)1500円(税込割引価格)を利用します。
お持ちでない方は、当日までにお手元にご用意くださいませ。
https://amzn.to/2HXAhbL
■申込方法■
https://lolipop-fp-will.ssl-lo
メルマガ過去号back number
Vol.2722021年4月13日発行