こんにちは。
税理士の備順子です。
さて、毎月第2・第4火曜日にお届けしておりますこの「マネーレシピ」。
第2火曜日は、税理士&FPの備順子から、
第4火曜日は、FPの前野彩からお送りいたします。
今回は、ここ最近お問い合わせの多い消費税についてのお話です。
年間売上1,000万円以下の小規模事業者は、
消費税を納税する必要がありません。
消費税の納税義務のない事業者を免税事業者と言います。
(逆に納税義務のある事業者を課税事業者と言います。)
免税事業者とその取引先の経営に
大きく影響を及ぼす改正がインボイス制度です。
インボイス制度そのものは
令和5年10月1日からスタートしますが、
それに先立って今月(令和3年10月)から、
この改正の核となる「適格請求書発行事業者」の登録申請が
開始されました。
そこで今回は、
消費税の基本的な仕組み、
インボイス制度、
免税事業者やその取引先に及ぼす影響を
備からお伝えしましょう。
┏━━━┓ 1.消費税のしくみをかんたんに
メニュー┗┓ 2.消費税制度はどうなるの?
┗┓ 3.インボイス制度とは?
┗┓ 4.影響と対応策は?
┗┓ 5.激変緩和としての経過措置あり
┗┓ 6.今月から始まる登録申請
┗┓ 7.セミナー告知
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■□ 税理士備順子のマネーのミニレシピ
□ ~消費税のしくみをかんたんに~
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消費税はものを購入した場合等に
10%(食品等は8%)の消費税を合わせて支払うという形で
消費者が負担します。
その消費税を実際に国に納めるのは、
消費者ではなく、事業者です。
ただし、消費者に売った事業者だけが
預かった消費税を国に納めるわけではありません。
原材料が工場に売られ、
製品となって小売店に卸され、
小売店で消費者の手に売られる
というすべての流通段階で消費税は課されています。
それぞれの流通段階の事業者は、
売り上げた際に預かった消費税から、
仕入れや、包装紙、交通費、店舗家賃等を支払う際に支払った消費税
(以後「仕入れに係る消費税」といいます)を
差し引いた差額を国に納めます。
「売り上げにかかる消費税」から
「仕入れにかかる消費税」を
差し引くことを
「仕入税額控除」と言います。
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■□ 税理士備順子のマネーのミニレシピ
□ ~消費税制度はどうなるの?~
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現在は誰から仕入れても対価のうち10%(又は8%)が
仕入税額控除の対象となります。
ところが、令和5年10月からは、
「売り上げにかかる消費税」から
免税事業者から仕入れ等をしたときに支払った消費税を、
原則として差し引くことができなくなるのです。
売り上げにかかる消費税から差し引く仕入れ等にかかる消費税が
大きければ大きいほど、
納税額が少なくて済みますので、
仕入れるときは、免税事業者から仕入れるのではなく、
課税事業者から仕入れたほうが得ということとなります。
この結果、免税事業者は、
取引から排除される可能性があるのです。
例えば、
企業から仕事を請け負っているシステムエンジニアや
デザイナー、FP(ファイナンシャルプランナー)、
デリバリー配達員などのフリーランス、
建築業者からの仕事を請けるひとり親方、
などが影響を受けることとなります。
逆にこれらの免税事業者に対価を支払う企業等も、
取引先の選別等の対応が必要となります。
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■□ 税理士備順子のマネーのミニレシピ
□ ~インボイス制度とは?~
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消費税の免税事業者から仕入れ等を行ったのか、
それとも課税事業者から仕入れ等をおこなったのかは
どうやって見分けるのでしょうか?
それは領収書や請求書で見分けます。
「適格請求書等発行事業者」が発行した
「適格請求書」に記載された消費税額に限り、
売上に係る消費税から差し引くことができます。
この適格請求書を発行することができる事業者は、
消費税の納税義務のある事業者(課税事業者)でなければなりません。
適格請求書とは
「売り手が買い手に対し 正確な適用税率や消費税額等を
伝えるための請求書や領収書」で、
これをインボイスといいます。
基準期間(注)の課税売上高が1,000万円を超えると
自動的に納税義務が生じ消費税の課税事業者となりますが、
1,000万円以下の場合は納税が免除(免税事業者)されます。
免税事業者は適格請求書等を発行できませんから、
買い手の事業者(発注者)としては同じ商品で同じ価格なら、
適格請求書等を発行する課税事業者から
購入することとなるでしょう。
免税事業者の売上先が一般消費者であれば、
全く何の影響もありませんが、
免税事業者の売上先が企業等の事業者の場合は、
免税事業者がその企業等の仕入れ先から、
外されることが予想されます。
(注)基準期間とは、個人の場合は前々年、法人の場合は前々期です。
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■□ 税理士備順子のマネーのミニレシピ
□ ~影響と対応策は?~
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免税事業者であっても課税事業者を選択すると、
適格請求書等発行事業者になれます。
例えば、建築業者の下請けをしている
一人親方(免税事業者)のケースを取り上げてみます。
売上高は990万円(内消費税90万円)で、
仕入等が440万円(内消費税40万円)とします。
免税事業者のままの場合
利益の計算 990万円-440万円=550万円
課税事業者を選択した場合
消費税の納税額 90万円-40万円=50万円
利益の計算 990万円-440万円-50万円=500万円
このように課税事業者を選択すると、
今まで負担することの無かった50万円の消費税を
支払わなければなりません。
しかし、課税事業者にならなければ、
下請けから外される可能性は大きくなります。
一方、建築業者側は下請け先として
小規模の一人親方を抱えていることも多く、
一人親方に支払った金額に対する消費税部分を差し引けないこととなると、
建築業者側の消費税負担が増加し経営を圧迫することにもなります。
そうなれば建設業者側としても
免税事業者の一人親方を下請けから外すか、
一人親方に課税事業者になることを求めるか、
あるいは値下げを迫るなどの対策をせざるを得ません。
このように建築業界は影響が大きいと言われていますが、
先ほど例示しましたように
企業から仕事を請け負っているシステムエンジニアや
デザイナー、FP(ファイナンシャルプランナー)、
デリバリー配達員などのフリーランスなどの業界も
影響は大きいものとなります。
インボイス制度の導入により、
免税事業者自身と、
仕事を発注する企業側の
それぞれが対応をせまられることとなります。
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■□ 税理士備順子のマネーのミニレシピ
□ ~激変緩和としての経過措置あり~
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インボイス制度の導入後は、
適格請求書等発行事業者でない事業者に
支払った仕入れ等については、
原則として仕入税額控除の対象となりません。
ただし、この制度は小規模な免税事業者に対する影響が大きいため、
激変緩和措置として令和11年9月30日までの6年間は、
段階的に80%や50%の仕入税額控除を認めています。
ただし、経理処理はかなり煩雑になる上に
100%仕入税額控除ができません。
そこまでして企業等が免税事業者と取引を継続するのは、
その免税事業者からかなり質の高いサービス等を提供されるなど
メリットが大きい場合か、
あるいは同族関係者間の取引などに限られるのではないでしょうか。
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■□ 税理士備順子のマネーのミニレシピ
□ ~今月から始まる登録申請~
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適格請求書を交付できるのは、
課税事業者のうち税務署に
「適格請求書等発行事業者の登録申請書」を
提出し登録を受けた事業者です。
登録を受けるとインターネットで
事業者の氏名(名称)と登録番号が公表されます。
この「適格請求書等発行事業者」の登録申請が
今月(令和3年10月)から始まります。
インボイス方式の導入される令和5年10月1日から
登録を受けるためには、
原則として、令和5年3月31日までに
登録申請書を提出しなければなりません。
なお、適格請求書等発行事業者となった場合は、
基準期間の課税売上高が1,000万円以下となっても、
免税事業者とならず、
消費税の納税義務は免れないことに注意が必要です。
免税事業者のインボイス制度への対応について、
1.課税事業者を選択する
2.課税事業者となり簡易課税制度を選択する
3.免税事業者のままでいる
などの選択があります。
顧客が、消費者かどうかや、顧客との関係性などにより
有利不利が異なります。
インボイス制度が始まる令和5年までまだ時間がありますので、
ぜひ、税理士や税務署等にご相談ください。
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Vol.2842021年10月12日発行