土地の放棄が可能になる???

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Vol.2782021年7月13日発行

土地の放棄が可能になる???

こんにちは。
備順子税理士事務所の備です。

さて、毎月第2・第4火曜日にお届けしておりますこの「マネーレシピ」。
第2火曜日は、税理士&FPの備順子から、
第4火曜日は、FPの前野彩からお送りいたします。


コロナ禍の中であっても、
夏休みには感染対策を万全にして、
実家に帰省する予定の方もいらっしゃるのではないでしようか?


ひさびさに帰省すると、目につくのが、
実家である古家の傷み具合。

バリアフリーにしてあげたい、
二重窓など省エネにもつながる断熱工事をしてあげたい、
使いやすいトイレを2階にも増設してあげたい、
耐震改修も必要かも・・・、
と、親のために改修資金を出してあげるということもあると思います。

親孝行な子のための、税法上の優遇措置はあるのでしょうか?

残念ながら、税務上の優遇措置はすべて、
自分が所有する家屋が対象で、
自分が住んでいなければ適用はありません。

「親孝行税額控除」があればいいのに・・・
とつい、思ってしまいます。


今回は、前々号に引き続き備より、
令和3年4月28日に公布された所有者不明土地解消策の一つであ
「土地所有権を手放すための新しい制度」についてご紹介しましょう。



┏━━━┓  1.土地を放棄できない理由
メニュー┗┓  2.土地所有権を手放すための新しい制度
     ┗┓ 3.セミナー告知    
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■□ 税理士備順子のマネーのミニレシピ
□   ~土地を放棄できない理由~
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相続で、欲しくも無いのに引き継いでしまった土地。

いらない土地だけを放棄しようとしても、
相続放棄というやり方では不可能です。
相続放棄ではそれ以外の資産も、
すべて放棄しなければなりません。

裁判でも土地を放棄できないという判断が出ています。
平成28年広島高裁では、
「所有権を放棄することで、
財産価値の低い土地の管理費用の負担や責任を、
国に押し付けようとすることとなり、
権利の乱用にあたり、無効である。」
という判断がなされていました。



放置するとどうなる?

売るに売れないということで放っておけば、
持っている限りは、毎年、固定資産税がかかります。
空き家が建っていて、
台風や地震の際に他人に危害を与えてしまいますと、
賠償責任に問われるリスクもあります。
山林などであれば、山崩れにより危害を与えしまうかもしれません。



では、国に寄付すれば・・・

タダでもいいからということで、
寄付したいと思っても、
市や県、国も行政目的がない限りは受け入れてくれません。

中には、固定資産税を納付せず滞納して、
差し押さえてもらおうと、考える人もいるようです。
ただし、不動産は換価処分に手間がかかるため、
まず、銀行預金や給与から差し押さえられ、
土地のみを差し押さえてもらおうと思っても、
なかなかうまくいきません。



不動産以外の財産なら放棄できる・・・

不動産以外の動産は捨てようと思えば、
不法投棄をしない限りは、なんとか捨てられます。
捨てにくいものも、お金を出せば、
不用品回収業者さんが片づけてくれます。

金銭債権(貸付金や売掛金)も債権放棄という手段で放棄できます。

一方、土地の場合、法務局に行って
「所有者が私となっていますが、私の名前をはずしてください」
と言っても受け付けてもらえません。



国は所有者不明土地を増やしたくない・・・

昭和の時代であれば、土地は持っているだけで価値があり、
所有すれば価値が上昇していきました。
ところが、現在では土地は、逆にお荷物になっています。
「負動産」とまで言われます。

相続により価値の無い土地を承継させられても、
遺産分割や登記する気も全く起こらなくなるのも当然です。
このままでは、これらの土地の行く末は所有者不明土地です。

前回は、相続登記を義務化したり、
未分割で10年経過すると法定相続分通り所有させたりすることで
所有者不明土地の増加を抑える改正をお伝えしました。

今回は、土地所有権を手放す制度の創設について、
ご紹介いたしましょう。

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■□ 税理士備順子のマネーのミニレシピ
□   ~土地所有権を手放すための新しい制度~
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令和3年4月28日公布された法律のひとつが、
「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」です。

相続や相続人への遺贈により取得した土地を手放して、
国庫に帰属させることが可能となる制度です。
ただし、
申請できる人の要件と、
申請できる土地の要件、
国に引き取ってもらうためのお金の要件があります。



この法律を使える人は・・・

まずここで留意したいのは、この法律は、
相続により望まないままに承継してしまつた人のための
制度であるということです。
ですから、相続人以外の人が「遺贈」で取得した場合は対象外です。

相続人以外の人が「遺贈」された場合で、
その土地はいらないというのであれば、
遺贈の放棄ができます。
遺贈の放棄がなされた土地は、相続人が共有することとなります。

また贈与や、売買、死因贈与や信託も
この法律の対象外となります。

なお、共有地の場合は共有者全員で承認申請すれば、可能です。



申請すること自体ができない土地は・・・

通常の管理・処分をするに当たって、
多くの費用や労力を要する次のような土地は申請できません。

ア 建物が建っている土地
イ 担保権や使用する権利等が設定されている土地
ウ 通路その他の他人の使用が予定されている土地
エ 土壌汚染がある土地
オ 境界が明らかでない土地、その他、所有権の帰属等で争いがある土地



土地の状況により、承認されない土地は・・・

上記の申請不可の土地は、申請そのものができません。
一方、次の項目に該当する土地は申請可能ですが、
通常の管理・処分を妨げたり、
過分の費用や労力がかかる土地であれば、
その状況次第で承認されません。

ア 崖がある土地
イ 有体物(工作物・樹木等)がある土地
ウ 地下埋設物(コンクリートガラ、井戸、地下室など)がある土地
エ 隣人との争訟が必要な土地
オ ア~エのほか、通常の管理・処分のために過分の費用や労力がかかる土地



審査手数料と10年分の負担金が必要・・・

承認申請者はまず、
承認申請のための審査手数料を支払わなければなりません。

そして、承認された場合は対象となる土地について、
国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の
標準的な費用の額を考慮して定められる金額を
支払わなければなりません。

現状の国有地の標準的な10年分の管理費用は、
粗放的な管理で足りる原野は約20万円、
市街地の宅地(200平米)で約80万円です。
これらの金額をもとに定められそうです。
柵や看板設置費用、草刈巡回費用等にあてられます。

申請者が負担金の金額の通知を受けてから、
30日以内に納付しなければ、失効してしまいます。



負動産の相続放棄スキームって???

ところで、近年の雑誌等の相続特集で、
負動産の合法的?放棄が紹介されていたりします。

具体的には、土地等の負動産以外の資産を生前に贈与しておき、
相続時の遺産は負動産のみという形にします。
そして、相続人全員が相続放棄をするというものです。

また、有用な財産は遺言で「遺贈」しておいて、
それ以外の負動産の相続については、
放棄するという荒業も紹介されています。

相続人がすべて相続放棄をして相続人が全くいない場合、
民法上「所有者のいない不動産は国庫に帰属する」とされていますので、
最終的に負動産は国庫にいくこととなります。

この手法の一つ一つの行為(生前贈与をする・相続放棄をする)については、
問題が無いかもしれません。

とはいえ、悪質な事案については、
相続債権者等から生前贈与や相続放棄の無効や、
生前贈与や遺贈に対する詐害行為取消権が、
行使される可能性も考えられます。
後々のトラブルの可能性もよくよく検討する必要があります。



実際のところ・・・

承認される要件に合致するためのハードルは結構高いように思います。
危険な崖地こそ個人ではどうしようもなく、
国に管理してもらいたいと思ってしまいます。
崖地は、費用も労力もかかるため、国庫に帰属させるのではなく
防災上の観点から、別途、行政的に対処するようです。

要件に合うようにするための除去費用も結構掛かりそうです。
ただし、今後何十年も、何代にもわたって、
管理責任とコストがかるのなら、
要件を満たす費用の負担や、
申請時の負担金も致し方が無いと思えます。


今まで全くなかった法律で、
令和5年までに施行される予定です。
実際施行されて、事例が積み重なることで、
どんどん使いやすくなることを願っています。


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